サイナスリフト
サイナスリフト(上顎洞底挙上術)とは

サイナスリフトとは、上顎臼歯部(奥歯)の骨が不足しているときに、上顎洞(サイナス)のなかに新しい骨をつくる外科処置です。
上顎の奥歯の上には、「上顎洞」とよばれる空洞が広がっており、加齢、歯周病、抜歯後の骨吸収などによって骨が薄くなると、インプラントを支える十分な土台が確保できません。
このように骨量が不足している場合、サイナスリフトで上顎洞の粘膜(シュナイダー膜)をそっと持ち上げ、その下に骨補填材を入れることで骨を増やします。
インプラントが骨としっかり結合し、長期的に安心して噛めるようにするための「土台づくり」の役割を担う処置です。
サイナスリフトの特徴

骨の高さが足りない場合(目安:4mm以下)に適応される
サイナスリフトが検討されるのは、上顎臼歯部の骨の高さが4mm以下と大きく不足しているケースです。
歯ぐきの側面に小さな窓をつくって上顎洞へアプローチする方法で、骨を大きく増やす必要があるときに適しています。
CT撮影を行い、骨の高さや上顎洞の形、粘膜の厚みなどを詳細に確認したうえで、治療の必要性を判断します。
また、持病や服薬状況など全身状態もしっかり確認し、安全に行えるかどうかを総合的に判断します。
広い範囲で骨を増やすことが可能
サイナスリフトでは、骨が不足している範囲が大きい場合でも、一度の処置でまとまった骨量の確保が可能です。
歯の欠損が複数あるケースや、インプラントを複数本予定している場合などでも対応しやすい点が特徴です。
骨を大きく増やす分、治癒に時間がかかるため、インプラントを埋入できるようになるまでの期間は比較的長くなります。
他の骨造成術との違い

骨造成術には複数の種類がありますが、当院では主に以下の3つの方法の中から、患者様の骨の状態に合わせてご提案しています。
それぞれの違いや特徴を把握することで、ご自身に合った治療を検討しやすくなります。
ソケットリフト(上顎・骨がある程度残っている場合)
ソケットリフトは、上顎臼歯部で「ある程度の骨の高さが残っている場合(目安:5mm前後)」に選ばれる方法です。
抜歯した穴(ソケット)をそのまま利用して上顎洞の膜を押し上げる方法で、サイナスリフトのように歯ぐきの側面から大きくアプローチするのではなく、 穴の真上から最小限の範囲で操作するイメージです。
ただし、骨造成できる範囲が比較的小さいため、広範囲の骨不足には向いていません。
ソケットリフトについてはこちら
GBR(骨再生誘導法)
GBRは、上顎・下顎問わず「骨の幅が足りない場合」や「小〜中程度の骨不足」でよく用いられる方法です。
不足している部分に骨補填材を置き、特殊な膜(メンブレン)で覆うことで、新しい骨ができるのを促します。
サイナスリフトとは異なり、上顎洞の内部には触れず、幅の不足や局所的な高さ不足を改善することが可能です。
大きく骨が失われている場合はサイナスリフトや他の方法と併用することもあります。
GBRについてはこちら骨量が足りないままインプラントするリスク

インプラントは骨と結合して安定するため、十分な骨が必要
インプラントは、人工の歯根(インプラント体)を顎の骨に埋め込み、その骨としっかり結合することで安定します。
この「骨と結合する性質」によって、天然歯に近い噛みごこちが再現でき、長期的に安定した状態を保てるようになります。
しかし、顎の骨の量が不足していると、インプラント体を支える土台が弱くなるため、インプラントが揺れやすくなったり、最悪の場合は脱落してしまう可能性があります。
せっかくインプラント治療を行っても、しっかり噛めない状態になってしまうこともあるため、適切な骨量を確保することは治療の成功に欠かせません。
骨が薄いとインプラントが揺れたり脱落する可能性
噛む力は自分の体重と同じほど強いといわれており、その力を受け止めるにはしっかりした骨の土台が必要です。
骨が薄いままインプラントを入れてしまうと、負担に耐えられず、揺れたり脱落してしまう可能性があります。
再治療になると時間も費用も大きな負担につながってしまうため、治療前に骨量を正確に検査し、必要に応じて骨を補う処置を行うことが重要です。
上顎洞を傷つける可能性
上顎臼歯部の骨が薄い状態で無理にインプラントを埋入してしまうと、先端が突き抜けて上顎洞内に入り込むリスクがあります。
上顎洞の内側には薄い粘膜(シュナイダー膜)があり、これを傷つけたり破ってしまうと、副鼻腔炎などのトラブルにつながる可能性があります。
サイナスリフトの手術手順
精密検査・歯周病治療
カウンセリング後、CT撮影などを用いて顎の骨の厚み・幅・上顎洞の形・粘膜の状態を詳しく確認します。
上顎洞の炎症や全身疾患の有無(糖尿病、服薬状況、喫煙など)もサイナスリフトの成功率に関わるため、事前の確認がとても重要です。
さらに、歯周病がある場合は、先に原因となる汚れや炎症をしっかり取り除き、歯ぐきの状態を整える必要があります。
歯周病の炎症が残ったまま骨造成を行うと、感染のリスクが高くなるため、安全に進めるためにも事前の治療が欠かせません。
歯肉を切開、上顎洞側面に小さな窓をつくる
麻酔後、歯ぐきの側面を切開し、上顎洞の壁(側壁)に小さな窓(開窓)を作ります。
視野を確保するため、出血コントロールや拡大鏡の使用など、丁寧な操作が求められる工程です。
上顎洞の膜を慎重に持ち上げ、骨補填材を入れる
上顎洞の内側にある「シュナイダー膜」を傷つけないよう慎重に持ち上げ、空いたスペースに骨補填材を入れていきます。
骨補填材には、自家骨(患者様自身の骨)や人工骨が使用されます。自家骨を使用する場合は、同日に別部位から採取して加工することが一般的です。
必要に応じて人工膜(メンブレン)で保護し、骨が安定して再生しやすい環境を整えます。
穴を塞いで縫合、経過観察へ
開窓部を覆い、歯ぐきを縫合して手術は終了です。
術後は消毒・抜糸を行い、骨が成熟してインプラントが埋入できる状態になるまで経過観察を続けます。
サイナスリフト後に骨が十分に成熟するまでの期間はおよそ6か月前後が目安ですが、個人差があります。
サイナスリフトのメリットとデメリット

メリット
- 骨が少なく「インプラントは難しい」と言われた方でも、インプラント治療を検討しやすくなること
- しっかり噛むための土台ができることで、インプラントの長期安定性が高まりやすいこと
- 広い範囲で骨を増やせるため、複数本のインプラントが必要なケースにも対応しやすいこと
デメリット
- 骨が育つまでに数ヶ月の時間が必要で、治療全体の期間が長くなりやすいこと
- 術後に腫れ・痛み・内出血などが出ることがあり、一時的に生活に注意が必要なこと
- インプラント単独の手術と比べると、追加の処置ぶん費用負担が増えること
- 上顎洞の膜が破れる、感染が起こるなどの合併症リスクを伴うこと
サイナスリフトの費用について

相場の目安
サイナスリフトの費用相場は、一般的に15〜30万円が目安とされています。
保険は適用されず、自由診療となるため費用が高額になります。
金額に幅が出るのは、使用する骨補填材の種類、治療する範囲、手術の難易度、設備体制などによって必要な処置量が異なるためです。
患者様ごとに骨の状態も異なるため、必ず事前の診査診断を踏まえたうえでお見積りをさせていただきます。
インプラント費用とあわせて考える必要がある
そのため、インプラントを複数本予定している場合や、上部構造(被せ物)の種類によっては、トータルの費用が大きく変わる場合があります。
- サイナスリフトの費用
- インプラント本体の費用
- 上部構造(被せ物)の費用
これらを事前に確認しておくことで、治療全体のご予算を把握しやすくなります。
また、当院ではアプラスのデンタルローンをご利用いただけます。まとまった金額が必要な治療でも費用面のご負担を調整しながら進めていくことが可能です。
術後の注意

処方された薬を指示通り服用する
術後に処方される抗生剤は必ず指示どおりに服用しましょう。
感染症を予防する効果があるため、自己判断でやめてしまうと細菌感染のリスクが高まり治癒が遅れる可能性があります。
薬をすべて飲み切ったにもかかわらず、腫れや痛みが長期間続く、患部周囲の違和感が取れないなどの症状がある場合は、早めに当院へご相談ください。
患部に負担をかけないようにする
術後は上顎洞や手術部位に圧がかからないよう、以下の点に注意が必要です。
- 強く鼻をかむ
- くしゃみを我慢する
- うつ伏せで寝る
- 頬に圧をかけない
- 激しい運動や長時間の入浴
- 喫煙を控える
うつ伏せ寝や、頬の圧迫、喫煙は血行を悪化させ、治癒が遅れる原因になります。
また、上顎洞に圧をかける動作は、術後の炎症やトラブルの原因につながる可能性があるため、術後数日間は無理をせず静かにお過ごしください。
治癒期間中は経過観察で骨の状態を確認する
サイナスリフト後は、骨補填材がしっかり馴染み、徐々に骨へと置き換わっているかどうかを定期的に確認していきます。
上顎洞の粘膜に炎症が起きていないか、感染や腫れといったトラブルがないかもあわせてチェックしながら、インプラントを埋入できるタイミングを慎重に見極めています。
また、受診時には口腔内のクリーニングを行い、細菌量を減らすことで術後の感染リスクを下げられるようサポートしています。
藤沢石川パール歯科のサイナスリフト

当院では、サイナスリフトの成功率を高め、治療後の長期安定につなげるために、以下の点を重視しています。
- CTによる三次元的な診査診断で、骨の量や上顎洞の状態を丁寧に確認します。
- 拡大鏡を用いて、上顎洞の膜を傷つけないように慎重に操作します。
- インプラント治療の豊富な経験をもとに、長期的に安定しやすい位置・本数を計画します。
- 必要に応じて、CGFを併用した再生療法を検討します(すべての症例で行うわけではありません)。
- 手術後も定期的なチェックとメンテナンスで、骨とインプラントの経過を継続して確認します。