入れ歯
入れ歯(義歯)について

入れ歯は、歯を失った部分を人工の歯と歯ぐきで補い、「噛む・話す・見た目を整える」といった毎日の生活に欠かせない機能を回復するための治療です。
歯が抜けたままにしておくと、かみ合わせのバランスが崩れたり、残っている歯に負担がかかったりするため、義歯はお口全体の健康を守るうえでも大切な役割を担っています。
入れ歯の役割
入れ歯の役割にはいくつかあり、食べ物をかみ砕きやすくするだけでなく、発音のしやすさや口元の自然なふくらみを保つことにもつながります。
特に奥歯を失った場合、噛む力が大きく低下してしまいますが、義歯を入れることで日常生活の不便さを軽減できます。
ブリッジ・インプラントとの違い
歯を失ったときの治療法には、入れ歯以外にも「ブリッジ」や「インプラント」といった選択肢があります。
どれが適しているかはお口の状態や希望によって変わります。以下にそれぞれの違いをまとめました。
| 治療法 | 特徴 | メリット・デメリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 入れ歯(義歯) | 取り外しして使う人工の歯 |
◎費用がかなく治療期間が短い ×噛む力は劣や弱め |
慣れに時間が必要 |
| ブリッジ | 両隣の歯を支えにして橋を架ける |
◎固定式で違和感が少ない ×支える歯への負担あり |
健康な歯を削る必要がある |
| インプラント | 顎の骨に人工歯根を埋め込む |
◎噛む力が強く長持ちしやすい ×外科処置が必要で費用が高め |
骨量によって適応に制限あり |
ほかの治療法については、専用ページで詳しく説明しています。
インプラント治療についてはこちら All-on-4についてはこちら
保険の入れ歯と自費の入れ歯の違い

保険のレジン床義歯の特徴
保険の入れ歯は、使用できる素材に制限があります。床の大部分をレジン(プラスチック)で作るため、強度を確保する目的でどうしてもある程度の厚みが必要になります。
そのため、装着したときに違和感や痛みが出やすかったり、使い続けるうちに割れやすい・変形しやすいといった特徴があります。また、金属と比べて熱が伝わりにくいため、食べ物の温度を感じにくくなる傾向があります。
快適さや長期的な安定を重視したい方には、自費の義歯の方が適している場合もあります。
自費の入れ歯が向いているケース
自費義歯は使える材料や作り方の制限がなく、快適さや見た目を重視したい方に向いています。
金属で薄く作れる金属床や、金具が目立たないノンクラスプ、安定感の高いコーヌス、精密に作るBPSなど、目的に合わせて選べる種類が多いのも特徴です。
見た目・薄さ・快適さの違いについて
自費義歯は、床を薄くしたり、歯に引っ掛ける金属部分を目立たなくできるため、装着したときの違和感が少なく自然な見た目になりやすいのが特徴です。
また、金属床は温度が伝わりやすく、食事の楽しさが損なわれにくいというメリットもあります。
一方で自由診療での治療となるため、費用が高くなりやすく、どこを重視するかによって選択が変わります。
当院でご提案している自費の義歯

ノンクラスプデンチャー
ノンクラスプデンチャーは、やわらかい特殊樹脂で作られた「バネのない部分入れ歯」です。金属の留め具が見えないため、笑ったときに目立ちにくく、口元の印象が自然に仕上がります。
軽くてフィット感も良いので、初めての入れ歯に抵抗がある方や見た目を最優先にしたい方によく選ばれています。
ノンクラスプ金属床義歯
ノンクラスプ金属床義歯は、金属床の「薄くて丈夫・温度が伝わりやすい」といった快適さに、ノンクラスプの”見た目の自然さ”を組み合わせたタイプの部分入れ歯です。
バネが見えないため口元が自然に見えつつ、金属床ならではの薄さと安定感が加わることで、通常のノンクラスプよりも噛みやすさや長期的な変形の少なさが期待できます。
コーヌスクローネ義歯
コーヌスクローネ義歯は、「茶筒のフタ」のように二重構造で支えるタイプの入れ歯です。
残っている歯に専用の金属をかぶせ、その上に入れ歯がピタッとはまる仕組みのため、安定感がとても高く、外れにくいのが特徴です。
- 部分入れ歯が動いて痛みが出てしまう
- かみ合わせが安定しない
といったお悩みがある方にとって、コーヌスクローネ義歯は特に適した治療です。精密な技術が必要になりますが、その分しっかりと噛みやすく、動きにくい使い心地が期待できます。
BPSデンチャーの特徴
BPSデンチャーは、総入れ歯のために開発された「精密義歯システム」です。
お口の動き・筋肉の動き・かみ合わせを細かく記録し、熟練の技工士が立体的に再現することで、吸着の良い“外れにくい総入れ歯”を作ることができます。
「総入れ歯が安定しない」「外れやすくて食事が楽しめない」という方が改善を実感しやすい義歯で、長く使うほど“自分の口に合ってきた”と感じやすいのも特徴です。
インプラントオーバーデンチャー(金属床)
インプラントオーバーデンチャーは、数本のインプラントを支えにして入れ歯を安定させる方法です。
総入れ歯が浮いてしまう・外れやすいといった悩みを大幅に減らせるため、しっかり噛めるようになりたい方に向いています。
金属床と組み合わせることで、薄く快適で丈夫な入れ歯に仕上げることができ、通常の総入れ歯よりも食事を楽しめるという点が大きく変わります。
外科処置が必要になりますが、総入れ歯の安定でお困りの方には非常に効果的な選択肢です。
義歯ができるまでの流れ

初診でのご相談・検査について
まずは、現在のお口の状態やお困りごとをしっかり伺います。
むし歯・歯周病の有無、噛み合わせ、粘膜の状態などを確認し、必要に応じてレントゲン撮影も行います。
患者様のご希望を伺いながら、費用や治療の流れもこの段階でご説明します。
精密な型取りとかみ合わせの確認
精度の高い入れ歯を作るために、まず「個人トレー」と呼ばれる、その方専用の型取り用トレーを製作します。(※義歯の大きさによっては製作しない場合があります)
既製のトレーよりも粘膜にフィットするため、より正確な型取り(本印象)が可能になります。
本印象(本格的な型採り)では、義歯の安定に関わる細かな凹凸や粘膜の動きまで丁寧に記録します。
その後、噛み合わせ(バイト)を専用のワックスで採得し、
- 上下の位置関係
- 噛んだときの高さ
- 口元のバランス
を適切に再現できるよう調整します。
こうした工程をしっかり踏むことで、装着したときのフィット感や噛みやすさが大きく変わってきます。
試適(仮合わせ)で見た目や噛み合わせをチェック
できあがる前の段階で、ろう義歯(仮の入れ歯)を使って、
- 歯並び
- 噛み合わせ
- 口元のふくらみ
などを確認します。
気になる点はこの段階で調整し、より自然で使いやすい義歯に仕上げていきます。
装着後の調整と、慣れるまでの期間の目安
完成した義歯をお口に合わせた後は、数回の微調整を行います。
最初の数日は違和感が出ることがありますが、多くの方が1〜2週間ほどで慣れていきます。
痛みが出る、当たる感じがあるなどの場合は、その都度調整することで快適に使えるようになります。
入れ歯を快適に使うために知っておきたいこと
痛み・外れやすさが出やすい理由
新しく作った入れ歯は、お口の粘膜や筋肉が慣れていないため、最初の数日〜数週間は痛みや違和感が出ることがあります。
特に部分入れ歯では、支えとなる歯や金具の位置によって、噛んだときの力が片寄り、外れやすさにつながることもあります。
また、粘膜はとても繊細なので、ほんのわずかな凹凸が「痛い」と感じる原因になる場合があります。
違和感や痛みがある場合の受診の目安
次のような場合は、無理に使い続けず、一度ご相談いただくのが安心です。
- 噛んだときに強く当たる場所がある
- 装着するときに痛みが走る
- 食事中に外れやすい
- 口内炎が繰り返しできる
- 入れ歯が動いて、話しづらい・食べにくい
痛みを我慢して使い続けると粘膜に傷ができたり、入れ歯が変形したりする原因にもなります。軽い違和感がでた時点で調整する方が、結果的に慣れるまでの時間も短くなることが多いです。
長く気持ちよく使うためのお手入れとメインテナンス

毎日の入れ歯ケア(洗浄・保管)のポイント
入れ歯は食べ物の汚れや細菌が付きやすいため、口腔内の健康や義歯を長く快適に使っていただくためにも、清潔に保つことをおすすめしています。お手入れを怠ると口内炎や口臭の原因になったり、入れ歯自体が変色・変形しやすくなることもあるため、毎日のケアが大切です。
- 外したらまず流水で汚れを流す
- 入れ歯専用ブラシで、強くこすりすぎないように磨く
- 研磨剤入りの歯磨き粉は使わない(表面を傷つけるため)
- 就寝中は水の入った容器で保管し、乾燥を避ける
- 洗浄剤は毎日、または数日に1回を目安に使用する
乾燥したまま置いておくと、変形する可能性があるため、水や液に浸けて保管をお願いしています。
残っている歯や歯ぐきを守るために大切なこと
部分入れ歯の場合、支えとなる歯(鉤歯)が特に汚れやすく、負担もかかりやすいため、念入りに歯磨きすることが大切です。
むし歯や歯周病が進むと、入れ歯が合わなくなるだけでなく、作り替えが必要になることもあります。
総入れ歯の方も、粘膜の清掃やマッサージをしておくことで、血流が良くなり吸着しやすさの維持につながります。
定期検診でチェックするポイント
入れ歯は使っていくうちに、土台となる歯ぐきや骨が少しずつ変化します。
そのため、定期検診では次のような点を確認します。
- 入れ歯のゆるみやがたつき
- 噛み合わせのずれ
- 摩耗やひび割れ
- 粘膜に傷ができていないか
- 部分入れ歯の支台歯の状態
費用

入れ歯の種類や使用する材料によって費用が異なります。
当院の自費義歯の料金は、別ページで詳しくご案内しています。
自費義歯の費用はこちら保険の義歯は材料は同じでも、歯の本数や大きさによって費用が変わります。
必要な設計が決まれば、その方のケースに合わせた金額を事前にお伝えできますので、ご不明な点はお気軽にご相談ください。