根管治療
根管治療が必要となる3つの主な症状
歯髄炎（しずいえん）
歯の内部には「歯髄（しずい）」と呼ばれる神経と血管が通る組織があります。むし歯が深くまで進行すると、この歯髄が細菌に刺激されて炎症を起こし、強い痛みを感じるようになるのです。
「冷たいもの・温かいものがしみる」「ズキズキとした痛みが続く」「眠れないほど痛い」といった症状が出ている場合は、神経の炎症がかなり進行しており、自然に元に戻ることはほとんどありません。
この段階では、痛みのもとになっている神経を取り除く「抜髄（ばつずい）」が必要になることがあります。
歯髄壊死（しずいえし）
むし歯の進行や外傷などが原因で、歯髄が死んでしまった状態が歯髄壊死です。神経が死んでいるため「痛みがなくなったので治った」と勘違いされることがありますが、実際は細菌が歯の内部で増え続け、気づかないうちに感染が広がっている段階です。
痛みがないため、レントゲンで初めて異常が見つかることも多く、壊死した組織を取り除き根管内を清掃する「感染根管治療」が必要になります。そのまま放置すると、次の根尖性歯周炎に進行します。
根尖性歯周炎（こんせんせいししゅうえん)
歯の神経が細菌に感染すると、細菌が根の先にまで広がり、その周囲の組織（歯根膜や骨）で炎症が起きます。これが根尖性歯周炎と呼ばれる状態です。
噛んだときに響くような痛み、歯ぐきの腫れ、膿が出る、歯が浮いたように感じるなどの症状が現れることがあります。
一方で、まったく症状が出ないまま進行しているケースも多く、レントゲン・CTで初めて病巣（黒い影）が見つかることもあります。この段階では根管内に細菌が広がっているため、根の中から感染源を取り除く治療が必須となります。
進行すると腫れや発熱を起こし、場合によっては顎や顔面に炎症が広がることもあり、早めの対応が重要です。
根管治療の種類と、それぞれの治療が必要な状態
抜髄（ばつずい）
痛みのもととなる神経を取り除く処置が抜髄です。むし歯が神経まで到達してしまうと、炎症は自然に治まらず、放置すると痛みが悪化してしまいます。
このため、細菌に感染した歯髄を取り除き、根の中をていねいに清掃・消毒することで、これ以上の炎症を食い止めることができます。
日常生活に支障が出てしまうほどの、強い痛みの症状がある場合が対象です。
感染根管治療
神経がすでに死んでしまった歯や、根の先に炎症が広がっている歯では、根の内部から感染源を取り除く治療が必要になります。死んだ神経の中は細菌が繁殖しやすく、そのままにしておくと根の先まで感染が進み、痛みや腫れが悪化する原因になります。
そのため、壊死した歯髄や細菌をしっかり取り除き、根管内を清潔な状態にしていくことが重要です。
感染根管処置は、「痛みはないのにレントゲンで黒い影が見つかった」「噛むと違和感がある」「歯ぐきに膿が溜まって腫れる」などのケースが当てはまる場合が多いです。
再根管治療
一度根管治療を受けた歯でも、根の中の細菌が取り切れていない場合、時間が経ってから再び炎症が起こることがあります。そのような場合に、もう一度根管内を清掃し直して感染を取り除くのが再根管治療です。
以前の治療で使われた被せ物や、充填材（根に詰めた薬）を取り除き、再び根の中を清潔にする必要があるため、初めての根管治療よりも治療の工程は多くなります。
「過去に治療した歯が再び痛み出した」「歯ぐきにニキビのようなものができた」「レントゲンで根の先に炎症が残っている」と指摘された場合などが該当します。
外科的歯内療法（歯根端切除術）
通常の根管治療を行っても改善が難しい場合、根の先に残った感染部分だけを外科的に取り除く方法があります。歯を抜かずに、問題となっている場所に直接アプローチできることが大きな特徴です。
根管が複雑な形をしている、被せ物の土台が強固で再治療ができない、根の先の病巣が大きく機械的に届かないなど、通常の治療では対処しきれないことが理由となります。
「治療を何度か受けたが、炎症が治まらない」「レントゲンで根の先に大きな影が見える」「再根管治療が物理的に難しい」などのケースでは、この外科的処置が選択肢になります。
歯根端切除については、別ページで詳しく解説しています。
歯根端切除についてはこちら
根管治療の成功率を左右する「精密さ」の重要性
高倍率ルーペ・マイクロスコープ（歯科用顕微鏡）の使用
根管の入口や内部はとても細く、複雑な形をしていることがあります。そのため、肉眼だけではすべてを確認することが難しいケースもあります。
当院の根管治療では、高倍率ルーペを使用し、根の中の細かな凹凸や奥の方の通り道までしっかり確認しながら処置をします。これにより、感染している部分を取り残さずに処置することができます。
見落とされやすい細い根の通り道や、分かれ道も確認しやすくなるため、治療の精度をより高めることができます。
歯科用CTによる三次元診断
レントゲンでは平面的にしか見えない根の形状も、CTなら立体的に確認できます。根の本数や曲がり具合、病変の広がりを立体的に把握することで、より安全で無駄のない治療計画を立てることができます。
また、根が大きく曲がっている場合や、病変が広範囲に及んでいる場合など、通常の根管治療では把握しづらい状態も事前に確認できるため、治療の成功率を高めることにもつながります。
CT撮影はすべての患者さまに必ず行うものではありません。根の形が複雑なケースや、レントゲンだけでは判断が難しい場合など、必要に応じてご提案しています。
ラバーダム防湿による安全で清潔な治療
根管治療では、治療中に唾液や細菌が根の中へ入り込まないようにすることがとても重要です。ラバーダムと呼ばれるゴムのシートで治療する歯だけを覆うことで、清潔な状態を保ちながら処置を行うことができます。
ラバーダムを使用することで、治療中に使用する薬液が口の中に流れ込む心配も少なくなり、患者さまの安全面にとっても大きなメリットがあります。
藤沢石川パール歯科で「安心」の根管治療を
痛みに配慮した優しい治療
「歯の神経の処置」＝痛い、というイメージを持たれやすいですが、適切に麻酔を行えば強い痛みを感じることはほとんどありません。
当院では、麻酔の前に表面麻酔を使用し、歯ぐきの感覚をやわらげたうえで処置を進めています。さらに、注入時の刺激を少なくするために電動注射器を使用したり、細いゲージの針を用いることで、針を刺す瞬間の不快感を軽減できるよう配慮しています。患者さまの負担を少しでも減らせるよう、痛みに配慮した手技を徹底しています。
治療中に不安なことや違和感がありましたら、遠慮なくお知らせください。
徹底した感染防止対策と医療安全への取り組み
根管治療の成功には、治療中に細菌が入り込まないよう清潔な環境を保つことがとても大切です。
当院では、器具の厳密な滅菌管理やディスポーザブル製品の活用など、院内感染対策を徹底しています。
また、治療する歯のまわりに唾液が触れないよう配慮し、細菌が根の中に侵入しにくい状態で処置を行っています。こうした環境づくりにより、安全性に配慮しながら治療を行える体制を整えています。
歯科外来診療感染対策加算
当院は厚生労働省が定める「歯科外来診療環境体制加算」の施設基準を満たしており、緊急時対応や感染対策に必要な設備・体制を整えています。
院内感染防止対策の徹底
高水準の滅菌器具の使用、治療ごとのチェア消毒、スタッフの感染対策研修など、患者さまに安心して受診いただくための取り組みを継続的に実施しています。
医療安全対策の確保
口腔外バキュームの設置や、院内での安全管理マニュアルの整備など、医療安全に関する体制も整えています。治療中の偶発症を防ぎ、安全かつ落ち着いて治療を受けていただける環境づくりを重視しています。
患者さまの立場に立った丁寧な説明
根管治療は複数回の通院が必要になることが多く、治療内容も専門的です。
患者様の口腔内で、何が起こっているのか、どのような治療を行うのかを、できるだけわかりやすく説明することを心がけています。
治療の選択肢やメリット・デメリットについても丁寧にお話しし、患者さまが納得したうえで治療を進められるようサポートしています。
通いやすさも治療成功の重要な要素
根管治療は途中で中断すると再発のリスクが高くなるため、「無理なく通えること」も治療の成功に大きく関わります。
当院は予約の取りやすさ、待ち時間の短縮などにも配慮し、忙しい方でも通院しやすい環境づくりを行っています。